森 博嗣
中央公論新社 (2004/10)
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押井守が今度映画化させる、という「スカイ・クロラ」の原作が気になって購入した訳だが、非常に興味深かったので今回取り上げてみようかと。
前評判とか
wikiの項目とかで、原作者の
森博嗣氏の評価として結構いいよ、というものを観てきた訳だが、実際読み進めてみると、その人たちが言っている意味がよく判った。
池波正太郎の小説を読むと、新国劇の脚本家出身と言うことで「ト書き」のような話の運び方な為に読み手が頭の中で映像を描きながら読み進めることが出来る、と以前どっかで書いたような気がするのだが、森さんの場合、ト書き調でもない、ただ淡々とした一人称の物語にも拘らず、まるで自分が仮想体験しているかのようにストーリーが頭の中に映像化されるのには驚かされる。
世界観とか謎設定とか、エヴァ以降のSFアニメにはお決まりのように取り上げられていた素材が、この小説には無い。
存在しないのだ。
深読みすれば出来なくもないが、敢えてする必要も無い事は実際読み進めて頂ければお分かりになるはずである。
押井守が映像化する、と言う事はこれが狙いなのだろうか。
今週末、ヱヴァンゲリヲンがリメイクと言う形で登場する。
この作品が単なる焼き直しなのか、10年後のアニメ技術の進歩をテーマにした内覧会になるのか、それともSFアニメの作風に新たな息吹を吹きかけることが出来るのか、まだこの段階では判らない訳だが、この作品をこの作品のまま映像化できれば、これはこれで新たな作風の提案になるんじゃないか、そんな気がするのですよ。
…ただこの押井守と言う人は良くも悪くも多分にアクの強い人だというのが気にかかって仕方が無い。
ともすれば独りよがりの閉塞した自分の世界観に作品を収束しがちな押井守が、どこまでこの徹底的に一人称な展開の続くこの作品をピュアな感覚のままで映像化させられるか、これは見ものである。
原作に勝手にスパイスとして、今までの「うる星やつら」でのあれやこれやとか、先日出淵裕さんにテメェの特集の中でダメ出しされた「機動警察パトレイバー」でやらかした時みたいな、押井守特有の「原作を自分の世界観に勝手に焼きなおした世界観」を挿入してしまう事があれば、これはキツい。
攻殻機動隊&S.A.C.シリーズでは成功したんだけどねぇ。
恐らくそれが出来れば、押井守自身が脱皮できるんじゃないか…って原作の話をしてたのに大脱線してしもうたわい。
あえて物語について殆ど触れずに書いているので何の本なのだか非常に判りにくいと思われるのだが、この作品は「敢えてネタバレを話すには勿体無い」一作なもので曖昧すぎて本当にスンマヘン。
とにかく読んでみる、そして文字から滲み出る風景に漂ってみる。
これはいいミニフライトになりますよ。
…そんなこんなでハマりこんでしまい、現在は2作目(時系列に直すと真逆なのだが)のこちらを読み進めているところ。
森 博嗣
中央公論新社 (2005/11)
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しかし草薙とか合田とか…あれ?
バンダイビジュアル (2005/01/28)
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